本研究は、土壌侵食の降雨因子に着目した地球温暖化の気候変動に伴う日本全国の農地の土壌侵食危険度を評価することを目的とした。本年度は、地球温暖化予測のためのGCM出力から時間的・空間的分解能の高い降水量分布を推定するための統計的ダウンスケーリング手法を検討した。また、土壌侵食の降雨因子を示すR係数算出に必要なデータ収集と計算ツールを作成した。 統計的ダウンスケーリング手法に関しては、GCMデータを過去の事象に結びつけるための類似度指標の検討を行った。はじめに、日本付近の気圧に関する日別のGCM出力データ(約2.8度単位、1961年から2000年)と過去の事象であるJRA-25長期再解析プロジェクトによる過去の気圧配置データ(1.25度単位、1979年から2006年)を収集した。次に、両データを比較するため、日本付近(東経121〜149度、北緯21〜52度)の範囲でJRA-25データを空間補正してGCMデータポイント位置における気圧データを作成した。これらのデータに基づき最適な類似度指標を探索したが、比較検討データ量が不十分なため類似度評価手法を決定するには至らなかった。次年度、引き続き類似度評価手法の検討を行う。 R係数算出に必要なデータ収集と計算ツール作成に関しては、日本全国のアメダス10分間降雨データ(1994年4月から2007年6月、日本全国のアメダスポイントデータ)を収集するとともに、当該データからR係数を求めるプログラムを作成した。
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