今年度は、供試カビとしておAspergillus oryzaeを、標準培地としてPDA培地を用いて測定を行った。はじめに、カビ成長に影響を与える環境変動要因として培養温度に着目し、カビ(A.oryzae)の成長時のコロニー径の経時変化、およびその画像を取得した。これより、PDA培地ではコロニーは同心円状に成長し、そのコロニー径を用量-反応モデルとして用いられるワイブルモデルを温度の関数式とした拡張モデルに適合させたところ、計算値は測定値を良く表現出来た。また、A. oryzaeの各培養温度での最大増殖速度はRatkowskyのモデルで良好に近似でき、これより温度周期性に対応できるモデルの構築が可能となった。次に、A. oryzaeのコロニーは、肉眼では温度20℃では分生子着色部は茶色を呈し、また培養温度が高くなるにつれ、全体的に灰色から白色へと分生子着色部の色は変化したことから、画像からコロニー色情報について抽出・検討した。その結果、コロニーのRGB各値のB値に温度に対して直線的な温度依存性が見出された。即ち、このカビコロニー色を指標として、カビに晒された温度履歴の解明がある程度可能であることを見出した。 次に、温度変動(温度周期)条件に晒したPDA培地上のカビ(A. oryzae)のコロニー画像を検討した。画像解析から一定時間温度変動を与えたコロニーは、カビコロニーの外観には幾何学的にRGB各値の異なる輪紋様が生じた。これより、コロニーがおおよそどの時間、温度変動を受けたか推察出来る可能性を示した。今後、コロニーが温度とともにどのような物質を産生するのか、を検討するとともに、実際のポストハーベストの現場を想定した防カビ(防黴)に環境が与える影響について測定・検討する。
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