研究概要 |
本研究は近年ともに脚光を浴びているブルーベリーと,ユニバーサルデザイン(できるだけ多くの人に対して使いやすいように配慮したデザイン)に注目した。ブルーベリー農園を4分類(A;大規模農園は振動収穫機、B;小規模農園は仕立て法や剪定方法、C;観光・教育・福祉農園は圃場デザイン、D;趣味農園は誰でもできる簡単な管理作業)して、ユニバーサルデザインの概念を考慮したブルーベリー栽培システムの構築を目指した。20年度はC観光・教育・福祉農園とD趣味農園を中心に研究を実施した。1.試験圃場の設定:当初は車椅子が進入可能となるような常設の進入路造成を考えたが、園内および周囲(雑木林等)の景観・生物相・子どもの遊び空間の創造等を配慮し、必要時に硬質マットを園内に施すことにした。2.圃場試験:身体の機能や動きを制限した体験実習として、ブルーベリーの車いす収穫(7〜8月)、目隠し収穫(8月)を約150名の学生等を対象に行い、作業能率や心拍数、運動強度、自覚疲労、主観調査および作業者の行動観察(質的調査手法)を調査した。3.現地調査等:除草作業時の心身影響(埼玉県、5月)、農作業と会話の関係(滋賀県、6月)、市民との交流体験方法(高知県、9月)、地域資源の循環(秋田県、12月)について検討・打合せのため訪問した。4)室内試験:肘・膝を固定した状態での枝切断作業(10月)、手指を固定した状態での苗移植作業(11月)を約60名の学生等を対象に実施した(調査項目は圃場試験と同様)。以上より、観光・教育・福祉農園や趣味農園で鍵となる「他者との関係を作る農作業体験プログラム」として今回導入した「車いす・目隠し収穫」といった協働を促す仕掛けや、手を動かしながら適度な会話が出来るブルーベリーの一連作業が効果的であったことが明らかになった。
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