研究課題
遺伝子導入法や選抜で確立したエリート植物細胞を用い、ストレス誘導法等により代謝経路を変えて有用化合物を生産させる機構の解明に取り組んだ。本年度は特に重金属欠乏およびアスコルビン酸の添加により引き起こされる代謝の変動を解析し、以下の成果が得られた。1)ヒヨスの毛状根を鉄欠乏ストレス下で培養すると、特異的に有用なリボフラビン(ビタミンB2)が分泌されることを見出した。鉄欠乏ストレス下では根の呼吸が促進することが明らかになったので、呼吸鎖複合体I~IVと代替経路の各々の阻害剤を用いて、呼吸活性およびリボフラビン生産への影響を調べた。その結果、大概は阻害剤の濃度に依存して生産量が抑制されたが、呼吸鎖複合体Iを阻害した場合にはリボフラビンの分泌量が1.5~2倍増加するという興味深い結果となった。同時に、リボフラビン生産関連遺伝子のクローニングを進め、その中の1つはこれまでに全く報告もなく、相同性も見られない新規の領域を含むことが明らかになった。これらの遺伝子の発現をRT-PCRで比較したが、鉄の有無による顕著な違いが見られなかったことから、現在、蛋白質レベルでの機能解析、呼吸鎖複合体とリボフラビン生産の関係の解明を進めている。2)ハマボウフウの培養根を一定濃度のアスコルビン酸で処理すると、医薬品として重要なフラノクマリンを誘導生産することを見出した。また、フラノクマリンの生合成経路を調べる過程で、フラノクマリン生成の最後のステップは誘導ではなく、常発現していることが明らかになったので、これらの結果を論文として報告した。更に、この生産は鉄がある濃度範囲で存在する時にのみ起こり、過剰や欠乏状態では起こらないことが判明した。特に、鉄欠乏下ではフラノクマリンとは全く異なる、化合物が新たに大量に誘導されてくることを明らかにした。この化合物の時間による消長や培地のpHの変動と生産との関係について、更に解析を進めているところである。
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