研究概要 |
本研究の目的は,鳥取砂丘の地下水位分布を明らかにすることで,自然文化財的価値の高い砂丘内の湧水(オアシス)の発生メカニズムを解明することにある。鳥取砂丘は海岸砂丘の典型として,一部が天然記念物,及び国立公園特別保護地区に指定されており,砂丘内の自然環境に人為的な影響が生じないよう厳しく管理されている。そのため,地下水位を観測するための井戸等の人工物の設置や大型測器による地下水位探査が事実上不可能である。そこで本研究では,地下水が流動する際に発する微少な音波を地表面から簡易に集音し,砂丘内の地下水分布を明らかにすることで,砂丘内のオアシス発生メカニズムを解明することを具体的な目的としている。平成20年度は,観測機器の設置が認められている,鳥取大学・乾燥地研究センター内の学術研究用砂丘内に観測井を設置し,この井戸内の地下水位と近域で集音した地下流水音との関係を確認することを目的とした。まず,乾燥地研究センター内に計14本の観測用井戸を設置し,流域の地下水位分布を,さらには地下水位の季節変動を観測した。また,代表1地点では,土壌水分・地温の連続観測も行い,地表面環境が地下水に及ぼす影響を確認した。地下流水音の測定は,設置した観測井の全地点の近傍で,無風時を選び測定を行った。測定の際の聴音波長域は100-1200Hzとし,低周波の音振動も測定することで地下水の爆気音にターゲットを絞った集音を行った。また,測定時には地下流水音測定装置にレコーダーを接続し,地下流水音の録音も合わせて行った。以上の観測の経過で明らかになった,砂丘地の水循環に関する現象は国内外の4つの学会で発表を行った。
|