研究概要 |
(1)ミニトマト茎部を伝播するガイド波の音響パラメータと水ポテンシャルの関係 ミニトマトの主軸に圧電発音体を取付け,茎長手方向に伝播するガイド波を発生させ,その音響パラメータと水ポテンシャルとの関係を調べた。伝播距離が200mm以上あれば,縦波モードと一次の曲げモードと思われるガイド波を分離・抽出することができた。そして,主軸を切断して矯正器に水ポテンシャルを低下させると,いずれのモードのガイド波も速度が低下し,減衰率が増加する傾向を示した。一方,恒温室で栽培しているミニトマトのガイド波を長期的に測定したところ,一次の曲げモードのガイド波の速度と減衰率は大きく変動したが,縦波モードのガイド波はほとんど変化が無かった。このことから,複数のモードのガイド波を測定し,その音響パラメータを用いる事で,水ポテンシャルを定量評価する可能性が示された。 (2)ハイブリッド音響測定によるミニトマト茎部の水分診断 ミニトマト茎部に圧電発音体,複数のAEセンサを取り付け,キャビテーションによるAE,茎部を伝わるガイド波の生成の同時測定(ハイブリッド音響測定)を行った。そして,灌水前後のAEの発生比,ガイド波の速度比からなる二つのパラメータを用いて,灌水制御を試みた。その結果,ガイド波の速度比から灌水時の水ストレス変動が十分大きいと判定され,AE発生比から灌水前のエンボリズム危険度が十分大きいと判定されたときに灌水量を増すことで,灌水制御が可能であった。また,このようなハイブリッド音響測定による灌水制御をテンシオメータを用いた灌水制御と比較したところ,総灌水量は少ないのにも関わらず,ミニトマトの果実の収穫量および糖度は同程度であり,最低限の灌水量で生育することができた。
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