研究課題
家畜の採食行動と植物の物理的強度との関係を明らかにするために、上顎の切歯が退化してないウシと、上下の切歯を持っているウマを用いて実験を行った。採食実験では、イネ科牧草のトールフェスクの葉身を1つのロードセルに10、20、30、40、50枚取り付け、それらの葉身の束を家畜に採食させ、その時に使用した力を0.006秒間隔で記録した。採食試験とは別に、葉身の引張り強度、せん断強度、曲げ強度を測定した。さらに、葉身の断面の形態を実体顕微鏡に接続したデジタルカメラで撮影し、専用ソフトを用いて葉身断面の面積を計測した。葉身の曲げ強度は変異が大きく、平均すると23.7±3.4gであった。せん断強度と曲げ強度との間にはr=0.77(p<0.003)という高い相関が認められた。これら2つの形質は葉身の断面の形状、特に主脈の発達の程度が大きな影響を与えていた。ウシとウマが1バイトあたりに使ったバイト強度と牧草の各種物理的強度を比較すると、せん断強度の結果から計算した値に近くなっていた。このことから、ウシ、ウマの採食は主にせん断によって植物を破断しているものと推察された。採食試験の結果から、使用した荷重あたりに摂取した乾物重を計算し、これを採食効率と定義した。葉密度が40枚と50枚では、ウマの採食効率はウシより高い値を示した。ウシは上顎の切歯を退化させ、その代わりに歯板を持つことによって、特に高密度の牧草を採食する際にウマに比べ力を効率的に使用できるものと推察された。上顎の歯板がクッションの働きをすると仮定すると、1バイトの時間はウマよりもウシの方が長くなると予想され、5段階の葉身密度の平均値を求めると、ウシで0.173±0.010秒であったが、ウマで0.111±0.003秒であった(p<0.001)。
すべて 2009
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