本年度は、家畜の飼料として広く利用されているイネ科植物の曲げ強度と関連する形質を解析し、家畜の選択採食におよぼす影響を明らかにすることを研究目的とした。トールフェスク(TF)、オーチャードグラス(OG)、デントコーン(DC)の葉身を用いて実験を行った。葉身の一定長さの重さと、曲げ強度、せん断強度、引張り強度を測定した。断面係数を計算するために、TFとOGの葉身には二重三角形モデルを、DCの主脈には二重放物線モデルを応用した。このようなモデルを応用した葉身の断面係数の計測結果は、これまで報告されたことはない。 葉身の曲げモーメントはTFとOGで90~113g・mm、断面係数は0.33~0.40mm^3、曲げストレスは0.38~0.47g/mm^2であり、有意な差は認められなかった。葉身の曲げ剛性、つまり曲がりにくさはそれぞれ41±0.4、8.4±0.6kg・mm^2であり、有意であった(p<0.001)。曲げ強度を自身の重さで割って安全係数を求めると、TFの21.2±1.3に対して、OGは35.8±2.6であり、有意な差が認められた(p<0.001)。 熟期の異なる4品種のDCを供試したが、品種間ではほとんど差はなかった。葉身の曲げモーメントは碁部で14.7±1.1、中間部で4.8±0.4kg・mm、断面係数はそれぞれ10.1±0.7、3.5±0.4mm^3であり、有意な差(p<0.001)が認められた。曲げストレスはそれぞれ1.70±0.19、1.47±0.13kg/mm^2であり、有意な差は認められなかった。葉身の曲げ剛性はそれぞれ1207±99、287±36kg・mm^2であった(p<0.001)。TFやOGなどの牧草と比べ、DCの結果はかなり大きな値を示したが、葉身断面の大きさの違いが反映したためである。今回の研究で作成した断面係数のモデルがどのような植物に応用できるのか、今後、検証する必要があろう。
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