生物多様性のもつ意義と重要性は、1992年の地球サミットで「生物多様性条約」が採択されたのを契機に生物多様性の維持機構や機能に関する研究や侵略的外来生物による生物多様性の危機に関する研究は数多く展開されている。しかしながら、生物多様性の高さと侵略的外来種の侵入・定着可能性との関係を明らかにしようとする試みは少ない。本研究は「外来牧草の雑草化防止に及ぼす草地の種多様性の影響」を解明することにより、生物多様性の重要な要素である種多様性が持つ頑強性の程度を評価する試みである。多くの外来牧草は2005年に施行された外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)でも要注意外来生物にリストされている。外来牧草が禁止の対象となれば、穀物価格が上昇して厳しい経営状況の畜産農家にとっては深刻である。そこで、外来牧草が雑草化するリスクや条件を明確化し、それを回避する管理方法の開発を目的とした調査と野外実験を行った。宮崎県串間市都井岬の岬馬放牧地(国指定天然記念物)では外来牧草の雑草化が進行中であるので、今後も調査を継続し、都井岬における外来牧草の雑草化の実態を調査した。さらに、都井岬以外の放牧草地における外来牧草の雑草化の進行状況の把握都井岬だけでなく日本各地の野草放牧地では、外来牧草が雑草化している様子が観察された。小松ヶ丘地区での外来牧草の雑草化は放牧圧の増加にともなう放牧草地の種多様性の減少と平行して生じているようであった。そこで、小松ヶ丘地区では3つの禁牧区を設けることによって放牧圧を減じた場合の種多様性と外来牧草の優占度の変化を測定した。それぞれ固定枠を設置し固定枠毎に植生調査を行ったところ、1年の禁牧では外来牧草の減少は顕著ではないことが明らかとなった。今後も実験を継続して放牧圧の効果の評価を行う。
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