研究課題
家畜・家禽の脂肪細胞の容量を決定するVLDLの本体であるapolipoprotein Bは、通常、post-transcriptional regulation (apolipoprotein B蛋白質の細胞内分解)によって制御されていることが知られている。本研究では、apolipoprotein Bの肝臓における新たな脂質シグナル制御機構を、これまで我々が情報を蓄積してきたオクタン酸・デカン酸をモデルにして明らかにして、「脂質シグナルー転写因子のクロストークー機能性食肉の生産」という新たな畜産の技術基盤を構築することを目指す。研究初年度である本年度は、鶏へのオクタン酸・デカン酸のトリグリセリドを給与した場合の肝apolipoprotein Bの代謝応答を明らかにすることを中心に試験を行った。1. オクタン酸・デカン酸のトリグリセリドを8%含む飼料をブロイラーに給与しても、肝臓apolipoproteinBの合成に大きな影響は認められなかったものの、各トリグリセリドを短期強制給与、あるいは高脂肪飼料にオクタン酸・デカン酸トリグリセリドを添加した飼料の給与では、肝臓のapolipoproteinB mRNA発現が有意に低下し、脂肪酸シグナルによる転写調節が認められた。よって、このシグナルは、脂肪が負荷された場合に発現するものと推定された。2. apolipoproteinB promoter上に推定結合配列が存在するHNF4-αのmRNA発現は、apolipoproteinB mRNA発現が低下する条件で低下していた。また、promoter領域にその結合配列は見出されないものの、脂質代謝を調節する転写因子SREBP-1のmRNA発現もHNF4-α同様低下していた。その他の、転写因子やインスリンなどのホルモン、細胞内のATPレベルに中鎖脂肪酸のシグナルの影響は認められなかった。3. 鶏apolipoproteinB promoterの配列をPCRで増幅し、pGL4.10にコンストラクトした。以上より、本脂質シグナルは新たな経路で作用していること、このシグナルはin vivoでも存在することが明らかとなった。
すべて 2008
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ページ: 102-107
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