研究概要 |
本年度は、鶏初代肝細胞を用いたin vitro実験系で、オクタン酸、デカン酸の脂質シグナルの本質に迫る解析、すなわちHNF-4αのプロモーター解析と鶏個体を用いた試験を行い、生体内でのシグナルの存在を実証するとともに、食肉への機能性脂質の移行を確認した。 1.pmmoter解析によるシグナルの確定 pGL4.10にコンストラクトした、鶏HNF-4αプロモーター領域(2000, 1500, 1000, 500, 300bp)を鶏初代肝細胞にpGL4.74とともにトランスフェクションし、デカン酸を用いたプロモーター解析を行ったところ、-1,000付近にシグナル応答部位が存在する可能性が示唆された。一方、apolipoproteinBのプロモーターをHNF-4αとともに導入したところ、HNF-4αに依存しない、新たな応答領域が-2,000~-1,000bpに存在することが明らかとなった。よって、脂質によるシグナルは、単一の分子や配列で制御されているのではなく、複合的な制御を受けていることをはじめて明らかにした。残念ながら、本研究では、そのすべてを解析することはできなかったが、中鎖脂肪酸による脂質代謝制御シグナルの存在を世界ではじめて確定することができた。 2.鶏生体における脂質シグナルの同定と機能性食肉の生産 平成20年度に確立したオクタン酸・デカン酸の強制給与実験系を用いて、転写因子であるHNF-4αの蛋白質発現解析を行ったところ、確かにHNF-4αタンパク質が減少していることを立証した。さらに、機能食肉生産の基礎研究として、食肉中の脂肪酸組成を測定し、機能性脂質が食肉に移行していることを確認することができた。しかし、その存在量は少なく、応用にはさらなる飼料給与スケジュールの検討が必要であることが明らかとなった。
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