研究概要 |
凍結乾燥したウシ精子の正常性をマウス卵子を利用した異種顕微授精系あるいは同種顕微授精系で調べることに平行して、ウシICSI系における卵子活性化補填処理の最適化を進めることを前年度までに概ね完了した。次に、凍結乾燥したウシ精子に由来する胚盤胞を作製できたとして、その胚を受卵牛の子官に移植することを想定すると、その胚を凍結保存しておく技術の開発が急務となるが、顕微授精由来ウシ胚の耐凍性に関する情報は非常に乏しかった(常法の二段階凍結法による報告が1編あるのみ)。本年度、ヒトES細胞においてアポトーシス抑制に有効なことが報告されていたROCK Rho-associated coiled-coil Kinase)の阻害剤、Y-27632を10μMの濃度で蘇生培地に添加することによって、IVF由来ウシ胚盤胞のガラス化保存後に95%もの高生存率を得ることに成功した(Hochi et al.,Theriogenology 2010;73)。また、胚盤胞までの発育スピードならびに胚盤胞の発育段階がガラス化・加温後の蘇生に及ぼす影響を精査し、外径が200μmを超える拡張胚盤胞期まで培養を継続してからガラス化保存する方がICSI由来ウシ胚の蘇生にとって望ましいことを明らかにした(Abdalla et al.,Theriogenology 2010;74)。 なお平成23(2011)年度、Nova Science Publishers出版の「In Vitro Fertilization」という本にウシの顕微授精を29ページ分、執筆し(著者校正済)、J Reprod Dev誌からは凍結乾燥ウシ精子の研究現状を紹介する総説を依頼されている(近日投稿予定)。
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