研究概要 |
当該年度では、各々の動物園での研究実施体制の相違から、アジアゾウおよびサイ(インドサイ、クロサイ)及びアムールトラにおける内分泌モニタリングを主に行った。 これらの動物種の糞や尿に含まれる性ステロイドホルモン代謝物を高速液体クロマトグラフィーで定性し、それらの含量の測定を開始して繁殖生理を解明した。 アジアゾウでは、(1)糞・尿中のプロジェステロン(P4)含量の動態から13.5~16.3週間の発情周期が確認できたこと、(2)尿中のエストラジオール・グルクロニド濃度が尿中P4濃度の上昇直前とその約21.3日前で2度のピークが確認できたこと、(3)黄体期と妊娠期では、糞中と尿中で5α-Pregnane-3,20-dioneなどの5α系プレグナンが各々3種類または2種類同定できたこと、(4)雄の糞・尿中のテストステロンやアンドロステンジオン(Ad)の動態から性行動との関係やマスト期の把握ができることを解明した。インドサイとクロサイの妊娠期と卵胞期における糞中の性ステロイドホルモン代謝物の同定を試み、両種の違いを明らかにした。その結果、クロサイの卵胞期には糞中の20α-ヒドロキシプロジェステロン、エストラジオール-17β、エストロンおよびAdが同定でき、さらに、インドサイでは5α系と5β系のプレグナンがともに妊娠期に含まれたが、クロサイでは5α系プレグナンが糞中に排泄されていたことが判明した。アムールトラの自然排卵後の黄体期は39.5±2.60日間で、妊娠期間は106±1.5日間であり、少なくとも1~5月、10~12月で妊娠が可能であると考えられた。またこの種の黄体期及び妊娠期の糞中には、主にP4、4種のプレグナンおよび5α-ジヒドロプロジェステロンが同定され、また卵胞期にはエストラジオール-17βとエストロンが主に排泄されていることが判明した。
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