研究課題
研究の対象とした動物種は、アジアゾウ、サイ、ネコ科動物(ツシマヤマネコ等)などである。昨年度までは、飼育されている動物園での研究実施体制が異なっていたが、本年度は科研費交付最終年度であるため、繁殖モニタリングができなかった種や個体について重点的に調査して研究を実施した。アジアゾウについては、発情周期が長期間認められなかった個体について飼育環境改善を実施し、個体数は限られてはいたが発情周期が回帰し始めた現象を捉えることができ、さらに日本国内の10頭を対象にして、血中のLH、血中と糞中のプロジェステロン並びに尿中のエストラジオールーグルクロニドの動態を捉え、発情周期、排卵日と外陰部からの粘液漏出との関係、妊娠期と出産日の予測などについて明らかにした。また、インドサイについては、血中と糞中の性ステロイドホルモン代謝物含量の動態を調べ、発情周期や妊娠期における詳細な内分泌学的変化を捉えることができた。さらにネコ科動物では、特にツシマヤマネコの内分泌動態について注力して検討した。すなわち、糞中の性ステロイドホルモンの動態から、本種が交尾排卵動物であり、11月下旬から4月に卵胞活動が盛んになり、ほぼ同じ期間に雄の精巣活動が活発になり交尾していることなどについて明らかにした。さらに、妊娠期と非妊娠期のプロスタグランジンF2α(PGF2α)の動態から出産が近づくにつれて顕著に上昇することや、糞中のコルチゾール含量の動態から個体の施設移動に伴うストレスなどを明らかにできた。また、本年度では特にネコ科動物での配偶子採取と凍結保存について実施したが、人工授精などによる産子をえることができなかった。今後もこれまでと同様に、東南アジアのみならず世界に存在するホットスポットに生息する希少動物の繁殖生理を把捉して、生息域外での積極的な保全対策を講じなければならないものと考えている。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
JVM獣医畜産新報
巻: 65巻 ページ: 199-203
J Equine Sci
巻: 22 ページ: 67-72
10.1294/jes.22.67
http://www1.gifu-u.ac.jp/~doi/index.htm