研究概要 |
ウズラ肝臓の卵黄関連遺伝子群(卵黄膜タンパク、ビテロゲニン、超低密度リポタンパク等)の発現を指標として内分泌撹乱化学物質の検出法の確立を試みているが、21年度は、内分泌撹乱化学物質投与による酸化ストレスを指標とするため、メタロチオネインmRNA転写量、カタラーゼ活性、およびマロンジアルデヒド産生量を測定した。その結果、内分泌撹乱作用を持つカドミウムを、抗酸化剤であるアスコルビン酸と同時に投与するとマロンジアルデヒド産生量の上昇抑制が確認できた。これはオスウズラでもメスウズラでも観察されたが、メタロチオネインmRNAの上昇抑制はメスウズラのみで顕著であった。これらの結果から、カドミウム暴露は胚発生の停止に至る毒性を呈し、これに対する抗酸化剤の保護効果は性によって違いがあることが示唆された。次に1型グルタチオンパーオキシダーゼ(GPX1)の発現を酸化ストレスの指標とするため、ウズラのGPX1をクローニングし、843塩基対の全長の塩基配列を決定した。これには153アミノ酸残基に相当するオープンリーディングフレーム、5'-末端非翻訳領域7塩基、及び3'-末端非翻訳領域377塩基が含まれていた。通常は停止コドンであるTGAのひとつはセレノシステインのコドンとして使われていた。他の動物のアミノ酸配列と比較したところ,ウズラGPX1は65~74%の相同性を示した。GPX1 mRNAは腎臓,副腎,肝臓,小腸,心臓,胸筋といったすべての臓器で発現していた。このGPX1 cDNAは、ウズラにおける内分泌撹乱化学物質の効果を知る上で有効なツールとなることが示された。
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