内分泌撹乱化学物質として疑いの持たれている物質の多くは脂溶性で、ステロイドホルモンのような内分泌機能の調節に悪影響を及ぼすと考えられているが、その作用機序はいまだに不明である。またセレンやカドミウムといった重金属のなかにも内分泌撹乱作用をもつものがあるとされているが、やはりその作用機序は不明である。そこで本年度は、ウズラの卵黄関連遺伝子群の肝臓における発現を指標として、内分泌撹乱化学物質やセレンやカドミウムのような重金属のもつ卵黄関連遺伝子の発現を指標とした内分泌撹乱作用を簡便に検出する方法を確立することを目的として研究を実施した。平成21年度までに確立した最適な投与方法によって卵黄に蓄積させた内分泌撹乱化学物質によるビテロゲニンと超低密度リポタンパクVLDL mRNAの増減を半定量的PCRによって定量し、発生中および艀化後2週間までの経時的変化を検討した。平成21年度に実施したリアルタイムPCRによる定量方法は、煩雑で、高価な試薬を使うため、実用的とは言い難い。そこで本年度はリアルタイムPCRと半定量的PCRの結果を比較することによって本方法の実用性を確認することができた。内分泌撹乱化学物質の効果は薬理学的用量依存反応ではなく、ある特定の狭い範囲でその効果が発現しているので、広い範囲の投与量を設定してその効果を詳細に探るべく、そのモデル実験を行なったが、超低密度リポタンパク遺伝子がもっとも敏感な遺伝子であることが判明した。またウズラの系統を確立して研究に供することが可能になったので、ジエチルスチルベストロールのような内分泌撹乱化学物質の影響を幅広く検出することができるようになった。
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