本年度は、リラキシン(RXN)様蛋白の構造面の研究に取り掛かり、以下の知見を得た。 1.受容体分子LGR8の特異抗体の作製 抗原としては、昨年度クローン化したLGR8部分cDNA配列を基にN末端にHis-tagを付与した発現ベクターを構築して大腸菌で発現させた組換え体LGR8のほかに、LGR8のN末領域およびC末領域の配列を基に作製した合成ペプチドも加え、ウサギに免疫して16種類のポリクローナル抗体を作製した。抗体の特異性は受容体LGR8を遺伝子導入したHEK293細胞を用いたWestern blotで調べた。その結果、数種類の抗体で特異性を示す可能性のあることがわかった。 2.精巣内の造精細胞における受容体分子LGR8の同定 クローン化したLGR8部分cDNA配列を鋳型として各部位でcRNAプローブを作製し、精巣における受容体LGR8のmRNA発現細胞をin situ hybridization法により同定を試みた。何種類ものcRNAプローブを作製してmRNA発現細胞の可視検出を試みたが、再現性のある満足ゆく結果は得られなかった。そのため、上記で作製した抗体を用いて免疫組織化学的にLGR8蛋白質の同定を試み、造精細胞がLGR8受容体を有していることを突き止めた。 3.造精機能の発達に伴うRXN様蛋白質とその受容体LGR8の遺伝子・蛋白質発現動態 精巣を経時的に採取し、判定量RT-PCRとWestern blot法ならびに免疫組織化学法によりそれらの動態を調べた。当初、定量PCRを計画していたが、増幅結果にバラツキが見られたため、半定量RT-PCRに切り替えて実験を実施した。その結果、RXN様蛋白質の遺伝子ならびに蛋白質の発現は、性成熟に伴い増大することが判明した。一方、受容体LGR8に関しては未だ検討の域を脱しておらず、現在解析を継続している。
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