研究概要 |
国内唯一の希少豚品種である琉球在来豚アグーには,近交退化に起因する高度な繁殖障害を認める。したがって,希少な雄アグーの遺伝資源を保存し維持すると共に,凍結精子を用いることでアグーの繁殖効率を改善すると云った点から,アグー精子の凍結保存技術の確立は喫緊の課題である。しかしながら,世界的に見てもブタ精子の凍結保存技術は未だ実用化されていない。そこで,従来までとは異なる視点からアグー精子における凍結保存の技術改良を図るため,以下の研究を実施した。 (1)凍結処理時の酸化ストレスからの保護作用が凍結融解アグー精子の性状に及ぼす影響を検討した。 (2)鶏卵黄から抽出精製した低比重リポタンパク質(LDL)を凍結用希釈液に添加し,精子細胞膜の流動性を維持することによる冷却・凍結処理時の凍結障害からの保護が凍結融解後のアグー精子の性状に及ぼす影響を検討した。 (3)精子凍結処理時の膜電位の低下によるミトコンドリア外膜からの細胞質内へのシトクロムcの放出をBcl-xL変異体である新規細胞死抑制タンパク質(FNK protein)で阻害し,凍結障害に起因した細胞内カスパーゼの活性化ならびにアポトーシス様細胞死を抑制したアグー精子の凍結保存を試みた。
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