ヤギは世界中広範囲に飼養されている家畜であるにもかかわらず、ゲノム解析が他の家畜と比べて大幅に遅れており、ゲノム情報を基盤とした育種は全く行われていないのが現状である。そこで本研究はヤギのゲノム情報蓄積と第一歩として全染色体をカバーする遺伝子マーカーを整備し、さらにこれらを家畜経済形質の遺伝子座の同定へ利用するため、ヤギのカシミヤ毛生産をターゲットに連鎖解析を行い、カシミヤ毛生産に関与するQTLを同定することを目的に実験を行い、本年度は以下に示す結果を得た。 (1)ヤギゲノムDNAからのマイクロサテライトマーカーの単離:LM-PCR法により新たなマイクロサテライト領域をスクリーニングした結果、177のCAリピートを含むユニークなゲノム断片を単離した。現在これらの配列についてSTS化を行っている。 (2)ヤギカシミヤ毛のQTL検出に有用な遺伝子マーカーのスクリーニング:これまで公表されているヤギDNAを鋳型にPCR増幅可能な227種のマーカーについて、我々が作成したザーネンおよびシバヤギ間の戻し交配個体群の親個体で多型解析を行った。その結果、135のマーカーがザーネンおよびシバヤギの親系統で多型が認められた。また、これらのマーカーのうちの90種のマーカーは蛍光ラベルし、マルチプレックス化した。 (3)遺伝学的解析によるカシミヤ毛生産に関与するQTLの検出と候補遺伝子の特定:ザーネンおよびシバヤギ間の戻し交配個体群を用いて連鎖解析を行った。その結果、ヤギ第5、16および27番染色体にヤギのカシミヤ毛生産に関与するSuggestive linkageを超えるQTLを検出した。特に、第5番染色体上のQTLは最も高いLODスコア(2.6)を示し、さらにこの領域には毛形成に重要な役割をもつタイプIIのケラチンクラスターが存在することが明らかとなった。
|