研究概要 |
従来、多くの生活習慣病の発症頻度には男女差が存在することが良く知られている。しかしながら、多くの場合、その性差の分子機構は不明の点が多い。閉経に伴い非アルコール性脂肪肝炎の危険性が高まることから、エストロゲンによる肝脂肪の蓄積抑制作用が示唆されているがその詳細な機構は解明されていない。本研究では、その機構を解明するために,肝臓の脂質代謝を調節する核内受容体LXR(Liver X Receptor)、PXR(Pregnane X Receptor)あるいはCAR(Constitutive Active/Androstane Receptor)とエストロゲン受容体ER(Estrogen Receptor)αの相互作用に焦点存絞って、エストロゲンの肝臓脂質代謝抑制作用の分子機構を検討している。 ERα欠損マウスの解析から、エストロゲンはERαをして肝性脂肪量を減少させるとともに、肝臓脂質合成酵素群の遺伝子発現を協調的に抑制することが明らかになった。初代肝細胞により検討から、脂質合成酵素の一つであるSCD1(stearol-Coenzme A desaturase 1)の遺伝子発現は、LXRリガンドにより増加し、これはERαリーガンドにより抑制されること、ERαがLXRあるいはCARと蛋白質複合体を形成することが示唆された。よって、エストロゲンにより活性化されたERαがLXRに結合することにより、これらの受容体により誘導されるSCD1遺伝手発現を抑制すると考えている。
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