研究概要 |
1. 旋毛虫が分泌するTransgelinの解析 旋毛虫由来のTransgelinについてRT-PCRおよびウエスタンブロットによって発現解析を行った結果、当該蛋白質は新生幼虫で最も高く発現していた。また、Transgelinは旋毛虫の筋肉内で最も多く発現していた。一方、旋毛虫感染マウスのTransgelin抗体は感染後極めて早期に上昇することが明らかになった。 2. 細胞を用いた旋毛虫Rcd1の生理活性の解析 (1) ルシフェラーゼアッセイによる解析 転写因子であるAP-1およびNF-κBは、免疫、細胞分化、アポトーシスなどにおいて重要な役割を果たしていることが知られている。そこで旋毛虫Rcd1のAP-1およびNF-κBの各特有な応答配列に対する転写活性に与える影響をルシフェラーゼアッセイによって解析した。その結果、Rcd1遺伝子の導入量に比例してAP-1、NFκBに対する転写活性は低下し、これらの転写因子を抑制することにより細胞に何らかの影響を与えていることが示唆された。 (2) Rcd1遺伝子のC2C12細胞導入による各遺伝子群の発現解析 真核細胞発現ベクター(pcDNA3.1)に旋毛虫Rcd1遺伝子を組み込み、筋芽細胞株であるC2C12細胞へ導入して遺伝子の発現解析を行った。発現解析した遺伝子群は我々がすでに旋毛虫感染により発現変化を確認した細胞分化関連遺伝子(myogenin,MyoD,Myf5)、細胞成長関連遺伝子、細胞周期関連遺伝子、ガン遺伝子、アポトーシス関連遺伝子等である。これらの中で筋肉細胞分化に重要であり、かつスクリーニングでRcd1蛋白の強制発現により遺伝子発現変化が高かったmyogenin,MyoDの発現について詳細に検討した。C2C12細胞は未分化時は紡錘形を呈しているが、分化誘導により細長く伸張し、互いに融合し筋管を形成する。MyoDあるいはMyf5の発現は分化誘導前から認められ、分化誘導によってmyogeninが発現し始める。Rcd1を強制発現させたC2C12細胞においては、分化誘導前から分化誘導後のすべての段階において、myogenin,MyoDの発現が抑制されたが、Myf5では大きな影響を与えなかった。一方、筋細胞分化の方向づけを行う因子であるPax7の発現も、myogenin,MyoDと同様に発現の抑制が見られた。
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