研究課題
本研究では、過活動膀胱の病態発現機構を明らかにする一環として、1)膀胱における生理学的および病態生理学的役割がまだ明らかになっていない間質細胞に着目し、同細胞がコリン作動性神経-平滑筋の情報伝達にどのような役割を果たすのか、2)その役割はムスカリン受容体のどのサブタイプを介しているのか、3)不安定膀胱の状態ではその役割がどのように変化するのかを明らかにし、尿失禁治療薬の新たな開発戦略を提供することを目的とした。今年度に得られた成果の概要は次の通りである。1)過活動膀胱のモデルマウスを作成し、排尿機能の変化、膀胱の組織形態変化、および膀胱平滑筋の収縮能の変化を解析した結果、モデルマウスでは、病態の初期にムスカリン受容体を介した収縮反応が増大するものの、病態の進行とともにむしろ抑制されることが明らかになった。2)膀胱におけるコリン作動性神経とプリン作動性神経を介した収縮反応を解析した結果、膀胱の肥大が進行したマウスでは、コリンおよびプリン作動性収縮に加え、未知神経を介する収縮が新たに発現し、この成分の占める割合が増加することが明らかになった。過活動膀胱のモデルマウスでは、間質細胞の数が増加することから、未知神経を介する収縮に同細胞が関与している可能性がある。また、この未知神経を介した収縮の実態が解明されれば、過活動膀胱の新たな治療薬のターゲットとなることが考えられる。以上の成果の一部は、日本獣医学会および日本薬理学会に発表するとともに、2編の学術論文として公表した。また、専門誌への投稿を現在準備中である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Journal of Veterinary Medical Science
巻: 73 ページ: 453-458
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