ニューロメジンUおよびSの中枢投与が循環器系に及ぼす影響 【目的】ニューロメジンU(NMU)及びニューロメジンS(NMS)は近年、オーファン受容体であるFM-3/GPR6、FM-4/TGR-1の内因性リガンドとして同定されたペプチドであり、NMUが中枢・脊髄および腸管に広く分布するのに対し、NMSは視床下部の視交叉上核にかなり限局して存在する。我々はこれまでに、両ペプチドには共通して摂食抑制作用、生体時計調節作用、抗利尿作用あるいは射乳作用があることを報告したが、いずれの作用においても両者の作用持続時間に有意な差が認められた。今回、これらのペプチドの中枢投与が心拍数や血圧などの循環器系へどのような影響を及ぼすかについてその作用時間を含めて検討した。【方法】慢性的に側脳室カニューレを装着した成熟雄ラットに、これらのペプチドを単一投与し、心拍数及び血圧を非観血的に測定した。また、ニューロメジンSのKOマウスにおいて心拍数及び血圧を測定した。【結果】NMU及びNMSの中枢への単一投与は、心拍数および血圧の有意な増加を誘起した。NMU投与では投与後10分で心拍数は有意に増加し、その後元に戻る経過を示したのに対し、NMS投与では数時間に及ぶ持続的な増加を誘起した。また、NMS KOマウスはワイルドマウスに比べ、心拍数が有意に低下していたが、血圧には有意差はなかった。【考察】以前NMUの単一投与が血圧を増加させることを報じたが、今回の実験によりNMUとNMSいずれもが心拍数や血圧に対して促進作用を有することが判明した。一方NMS KOマウスでは有意な心拍数の低下が認められ、NMUとNMSの投与結果と一致したことから、これらが循環器系に対して生理学的役割を果たしていると推測された。
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