21年度は走行運動と摂食行動にどのような関係があるのか?という課題について検討した。実験では走行運動と摂食行動の関係について、ラット(成熟雄SDラット)の毎日の走行運動可能時間を24時間から3時間に制限したときに摂食量はどのように変化するのか、逆に毎日の給餌量を制限した場合や高カロリー食を給餌した場合に走行運動量はどのように変化するのかを輪廻し付きのケージを用いて調べた。ラットを輪廻し付きのケージで飼育し、毎日の走行可能時間を3時間から24時間に増加させた場合、有意な摂食量の低下が認められた。逆に毎日の走行可能時間を24時間から3時間に制限させた場合には、摂食量は有意に増加した。一方で毎日の給餌量を制限し摂食量を減じると給餌制限期間でのみ走行運動量の有意な増加がみられ、高脂肪食を給餌すると、給餌前に比較して走行運動量は有意に減少した。ニューロメジンUとSの中枢投与は走行運動を促進し、摂食を低下させた。次に、摂食量と走行運動の関係を肥満動物で検討した。その結果、肥満動物では肥満を発症する以前から過食が起こり、これによって走行運動が抑制されていることが判明した。また肥満動物にニューロメジンUおよびSを投与しても走行運動の抑制は解除できなかった。以上の結果より、ラットにおいて「走行運動と摂食行動の間には、走行運動が抑制されると摂食は亢進し、逆に走行運動が増加すると摂食は抑制される。」という、いわば相反的共役の関係が存在することが判明した。またニューロメジンはこの相反的抑制機構に作用していると推測された。一方、肥満動物ではこの相反的共役の破綻が起こっていること、この状況ではニューロメジンの効果が認められないことが示唆された。
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