研究概要 |
主に視交叉上核(生体時計部)に限局して発現しているペプチド、ニューロメジンS(NMS)はニューロメジンU(NMU)とN端8個のアミノ酸が相同性を有し、NMUと同じ受容体(NMUR1,NMUR2)に作用するが、NMUとは別の染色体上にコードされている。これまでに、生体時計調節、摂食抑制、抗利尿あるいは射乳促進などの作用を明らかにしたが、いずれもNMUよりも顕著に強い作用を示した。以前NMUの中枢投与が体温を著しく上昇させることを報じたが、体温には日内リズムが存在することから視交叉上核のNMSの関与はNMUとは異なる可能性がある。そこで、両者の体温への影響を比較検討した。体重300~400gのWistar雄ラットの側脳室に慢性的ステンレスカニューレを装着した。回復後に明期と暗期の両方で1nmolのNMSとNMUを側脳室に投与し、赤外線サーモグラフィにより背中(肩甲骨上部)の体温を経時的に測定した。明期での投与ではNMSとNMUの両者ともに約1度の体温上昇が見られ計測終了時(60分)まで上昇は維持された。一方、暗期の投与でも上昇作用が見られたが、終始圧倒的にNMUの効果が強く現れNMSとNMUの効果には有意差が生じた。NMSにも体温上昇作用があることが確認された。しかし、NMUが暗期に体温を著しく上昇させたのに対し、NMSにはそのような強い作用は認めなかった。NMUの方が強い作用を示したのは初めてであり、両者には異なる作用の関与が推測される。 以上の結果、ニューロメジンSは生体時計を通して体温の調節に重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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