研究概要 |
ニホンウズラの幼雛期の各臓器におけるmRNA転写量の解析ではTLR2について、IgG低濃度(L群)、高濃度群(MH群)1,3,5および7日齢各3個体を供試し、各腸管からmRNAを抽出しcDNA合成後、mRNA発現量を比較解析した。その結果、3日齢からL群濃はMH群に比べ明らかにその発現量が高かった。特に7日齢の回腸では約4倍量の発現を示した。TLR2,4の各日齢および各臓器における発現解析抗TLR2および4抗体を用いて、1,3,5日齢の消化器系およびリンパ系組織を免疫蛍光染色した。そのTLR2,4いずれも、腸管、肺胞、上皮組織、1,3日齢よりも5,7日齢での染色が強く、またTLR4がその陽性細胞密度が高く、TLR2よりも強い発現が示された。IgG濃度差異は明確にできなかった。DEFBは抗体作製、発現定量を実施しなかったが、3週齢においてDEFB2,8,10および12の発現を確認した。TLRのmRNA転写と腸内細菌叢および成熟個体の腸内細菌叢データと免疫染色像より、1~3日齢まではTLR2,4の発現量が低く、16SrDNA解析では15科31属を同定し、3羽以上に検出された8科16属が群・日齢により変動が顕著であり、腸内細菌叢の菌種は5,7日齢が3週齢、成熟個体のそれに類似していたのに対し、空腸の嫌気性菌総菌数は、1,3日齢でL群がMH群より有意に高く、IgG濃度と盲腸の好気性総菌数に有意な正の相関があった。また、空腸の嫌気性G+桿菌、嫌気性総菌数、好気性G+桿菌、回腸の好気性G+桿菌に有意な負の相関があった。TLR4がTLR2よりも幼雛での発現は高く、空腸の嫌気性G+桿菌および嫌気性総菌数がIgG濃度の変動に関連し、それが回腸でのTLR2発現差を誘導したと推測された。ニホンウズラは幼雛期3~5日の間で自然免疫から獲得免疫の架け橋となる誘導が腸内細菌叢定着と関連して活気的に起こることが推察された。これらは幼雛初期段階での遺伝的生理機能制御が成熟個体の免疫系へ大きな影響を与えることを示唆し、獲得免疫誘導発達をより明確化するのに重要であり意義があるものである。
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