本研究では、多様な機能をもつ重要なサイトカインであるTGF-βファミリー(アクチビン、TGF-β、BMP2)とレセプター、その細胞内情報伝達因子であるSmad、そして細胞特異的転写因子であるMitf(Microphthalmia-assosiated transcription factor)に注目し、破骨細胞分化過程における分子機序の一端を明らかにすることを目的としている。 これまでに、RAW264細胞(マクロファージ系細胞)株や骨髄由来初代培養細胞をRANKL刺激して破骨細胞様細胞を形成する分化過程において特徴的なアイソフォームであるMitf-Eが発現誘導されることを報告した。研究最終年度は、このMitf-Eの役割を調べた。RANKL刺激による破骨細胞分化誘導においてsiRNAによるMitf-Eノックダウンを行うと、各種破骨細胞分化マーカー遺伝子のmRNA発現量が低下しているだけでなく、破骨細胞様細胞の形成数が有意に減少するなど形態学的な分化抑制も確認した。一方、RAW264.7細胞で恒常的にMitf-Eを発現する安定株を作製し、破骨様細胞誘導実験を行ったが、形態や分化マーカー遺伝子発現に特に大きな変化はみられなかった。また、RAW264.7細胞でのRANKL刺激による破骨細胞分化過程におけるアクチビンの添加では、Mitf-E遺伝子と各種破骨細胞分化マーカー遺伝子の顕著な発現増加がみられ、形態でも破骨細胞様細胞の巨大化や多核細胞数の増加が認められた。さらに、細胞融合に関連すると考えられるItgb3遺伝子の発現も有意に増加した。アクチビンによる破骨細胞分化誘導刺激は、発現増加したMitf-Eを介して部分的に制御されているのかもしれない。各種細胞内シグナル伝達因子(Smad、ERKなど)のリン酸化を調べたが、有意な変化は見つけられなかった。
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