研究概要 |
本研究ではウシ妊娠認識物質であるIFNτの性に依存した分泌動態の生じるメカニズムを解明することを目的としている。これまでウシIFNτの発現に影響を与える転写因子(Oct4,Ets2,cdx2,Dlx3)の遺伝子発現量をリアルタイムRT-PCRによって測定し検討を加えたが、これまでの報告(マウスではOct4の発現に雌雄差がある)や仮説とは異なり、いずれにおいても雌雄でその発現量に差が見られなかった。雌雄胚では細胞内での参加還元状態が異なること、さらに転写因子Oct4はその活性が酸化還元状態に左右されることから、今年度はウシ胚盤胞期胚を用いたchIPアッセイによって転写因子Oct4に結合しているIFNτプロモータ領域遺伝子量を検討した。しかしながら、雌雄で差が見られなかった。一方、新たにゲノムDNAにメチル基を付加する酵素であるDNAメチル化酵素(Dnmt3a)の遺伝子発現量をウシ雌雄胚において測定した結果、有意に雄で雌よりも高い結果が得られた。そのため、ウシ胚培養液にDNAメチル化酵素阻害剤(5AZdC)を添加し、IFNτ分泌量を比較したところ、低濃度(1-5μM)では濃度依存的に雌胚の分泌するIFNτ量は増加する傾向にあったが、雄胚では変化が見られなかった。しかしながら、調査した中でもっとも高い濃度(10μM)では雌胚の分泌するIFNτは有意に低下した一方雄胚の分泌量は変化が無かった。さらにこの濃度ではIFNτの性に依存した分泌動態は消失することが示された。
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