アクチビンは、細胞の増殖・分化などの調節に働く多機能因子である。我々は、免疫担当細胞におけるアクチビンの作用に着目し、アクチビンが種々の免疫担当細胞の活性化にともなって分泌される事を明らかにして来た。アクチビンは免疫応答に重要な働きをする因子であると考えられ、免疫抑制作用を有するTGF-□とは明確な役割分担をしている可能性が浮き彫りになっている。我々は、獲得免疫と自然応答の双方において重要な役割を果たすマクロファージにおけるアクチビン産生とその機能についての研究を進めた結果、マクロファージがToll-like receptor-4(TLR-4)のリガンドであるLPSの刺激を受けて活性化するとアクチビンを産生することが明らかとなった。LPSによるアクチビン産生は、mRNAレベルで調節されている。一方、炎症抑制性サイトカインであるTGF-β1およびその受容体の発現はLPSによって抑制された。我々は、マクロファージのmatrix metalloproteinase(MMP)産生に及ぼすアクチビンの効果について検討した結果、LPS刺激の有無に拘わらず、マクロファージによるMMP-2のmRNA発現および活性は、アクチビンによって促進された。MMP-9発現および活性に対しては、アクチビンの効果は認められなかつた。一方、TGF-βは単独でMMP-2とMMP-9の産生を刺激するが、LPSによって誘導されるMMP-9の産生は抑制した。つまり、アクチビンとTGF-βの活性は一部重複するものの明らかに異なっており、両因子が炎症に際して機能的な分業をしている可能性が示された。活性化したマクロファージが産生するアクチビンは、パラクラインまたはオートクラインによってマクロファージ自身を含む炎症性細胞に働き、MMP-2の発現調節を介して、基底膜の分解や細胞の炎症局所への浸潤に働く可能性が示唆された。
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