これまでに確立した、SEsおよびSElsのELISAによる検出法の高感度化を図るため、化学発光による検出系の導入を試みた。その結果、従来の検出系よりも5〜10倍高感度な免疫学的検出系を構築することができた。さらに、標識抗体にニワトリ抗体を導入することにより、黄色ブドウ球菌が産生し、免疫学的検出法に干渉するプロテインAの影響を最小限にすることが可能であった。加えて、米飯のアミラーゼ処理による効率の良いSSEs抽出・濃縮法を検討し、実験的に黄色ブドウ球菌を接種した米飯におけるSEs/SElsの産生総量を測定することに成功した。これらのデータは、新型SEsの食中毒原性を評価する上で極めて有用である。 さらに、SEsの嘔吐活性発現機構を解明するために、ジャコウネズミ(Suncus murinus)にSEAを経口投与して経時的に十二指腸を採取し、抗SEA抗体を用いた免疫蛍光法により、SEAの腸管組織内における動態を観察した。その結果、SEAは腸管上皮を極めて迅速に通過し、投与後30分で粘膜下組織に移行することが明らかになった。また、株化細胞caco-2によるin vitroでの実験では、SEAの迅速な通過は観察されなかった。現在、ジャコウネズミ腸管粘膜下組織においてSEAが特異的に結合する細胞の同定を進めている。このデータは、これまでほとんど明らかにされていないSEsの嘔吐活性発現機構の解明を進める上で重要な知見であり、次年度はSEA結合細胞の同定とSEAの嘔吐活性に係わるレセプター分子の同定を中心に研究を進めることとする。
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