1)高感度ELISAによる食中毒原因食品中のブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)量の解析 前年度に確立した高感度ELISAと食品からの毒素抽出・濃縮法を用い、黄色ブドウ球菌を接種したにぎりめし中で産生されたSEs定量を行い、食中毒事例分離株のSEs産生能力評価を行った。既知のSEsに加え、新型SEsも相当量が食品中で産生されうることが明らかになった。また、SEsのうち、幾つかの毒素は37℃よりも25℃でその産生量が増加することを明らかにした。さらに、2000年に発生した大規模食中毒の原因食品である加工乳の原料となった脱脂粉乳中のSEs総量を明らかにした。本事例はSEAとSEHによるもであり、その発症毒素量は220ng/personと推定された。 2)Suncus murinusを用いたSEAの生体内動態の解析とSEs結合分子の局在部位の解析 SEsの嘔吐活性発現機構を解明するために、ジャコウネズミ(Suncus murinus)にSEAを経口投与して経時的に胃および十二指腸を採取し、抗SEA抗体を用いた免疫蛍光法により、SEAの腸管組織内における動態を観察した。その結果、SEAは腸管上皮を極めて迅速に通過し、投与後30分で粘膜下組織に移行し、その後粘膜下組織に存在する肥満細胞に結合することを明らかにした。さらに、SEA投与後、経時的に粘膜下組織における肥満細胞の抗5-HT染色性が低下することが明らかになった。これらの結果は、これまでほとんど明らかにされていないSEsの嘔吐活性発現機構の解明を進める上で重要な知見である。
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