研究概要 |
1)高感度ELISAによる食中毒原因食品中のブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)量の解析 申請者が確立した高感度ELISAを用い、新型エンテロトキシンSEG,SEI,SEM,SEN,SEOの産生動態を解析した。これらの新型SEsは、37℃の培養では産生量が極めて少ないが、20-25℃で培養するとその産生量が増加することを明らかにした。毒素産生動態と細菌の増殖動態を解析したところ、37℃培養では毒素産生は対数増殖期後期から定常期に入ると急速に低下するのに対し、20-25℃においては定常期に入っても毒素産生が持続することによることを明らかにした。この知見は、新型SEsの食中毒原性を評価する上で重要である。 2)Suncus murinusを用いたSEsの生体内動態の解析とSEs結合分子の局在部位の解析 SEsの嘔吐活性発現機構を解明するために、ジャコウネズミ(Suncus murinus)を用い、蛍光抗体法によりSEAの腸管組織内における動態を解析した。SEAの標的臓器は腸管粘膜下組織の肥満細胞であり、SEA投与により粘膜下組織の肥満細胞が特異的に脱顆粒すること、また、脱顆粒に伴い5-HTが放出され、これがSEAによる嘔吐発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、腸管内腔から腸管組織へのSEAの侵入には、杯細胞が関与することを示す結果を得た。これらの成果は、SEsの嘔吐発現機構の詳細を解明する上で重要な知見と考えられる。
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