これまで鹿児島大学農学部付属動物病院に来院したイヌおよびネコの患畜から細菌感染が疑われる検体を収集し、血液寒天で分離培養することによりそれらの検体から病原菌を分離した。通常のグラム染色およびカタラーゼ試験、オキシダーゼ試験、OF試験などの生化学的性状検査により118株のブドウ球菌属が得られた。さらに、これらの菌株をマンニット食塩培地で培養し、コアグラーゼ試験とAPI Staphキットを用いた種同定法により分類した。またPCR法を用いた遺伝子レベルでの同定法も実施し菌種の確認を行った。合計118株のStaphylococcus属菌が収集された。このうち、S.aureusは20株、主にイヌに外耳炎や膿皮症を引き起こすS.intermediuesは64株、コアグラーゼ陰性Staphylococcus群(CNS)は34株であった。可動性遺伝子カセットStaphylococcal cassette chromosomalmecに含まれ、βラクタム薬耐性に関与す蛋白をコードするmecAの保有率は、それぞれS.aureusで55%(11株)、S.intermediusで41%(26株)、CNSで9%(3株)であった。mecAはヒトの院内感染に強く関わるメチシリン耐性を担う遺伝子であり、これが動物からよく分離されるS.intermediusからも検出されたことから、ヒト由来ブドウ球菌と動物由来ブドウ球菌との間で耐性遺伝子の移動がある可能性が考えられる。今後これらの菌株の多剤耐性状況および耐性遺伝子保有状況も明らかにし、ヒト由来株との疫学的比較解析を進めて行く予定である。
|