研究概要 |
2004年から2006年の間に,世界の計8地域から輸入されたペット用齧歯類27種516頭のBartonella属菌の保有状況について検討した。 Bartonella属菌の分離は,各個体の血液を5%兎血液加ハートインフージョン培地で35℃,5% CO_2下で2週間培養した。Bartonella属菌を疑う分離株からDNAを抽出し,rpoBおよびgltA領域を標的としたPCRによりBartonella属菌であることを確認し,両領域のDNAシーケンス解析により種の同定を行った。また,分離株の塩基配列からNJ法で系統樹を作成し,クラスター解析を行った。 今回調査した輸入齧歯類27種516頭のうち,17種142頭(27.5%)からBartonella属菌が分離された。7種のリス科動物からは,人に心内膜炎を起こすB.washoensisが,4種のリス科動物からは人に視神経網膜炎を起こすB.grahamiiがそれぞれ31.7%(45/142),8.5%(12/142)から分離された。また,6種のネズミ科動物からは,人に心内膜炎を起こすB.elizabethaeが18.3%(26/1421から分離された。さらに,陽性個体の41.5%(59/142)が新種と思われるBartonella属菌を保菌していることが明かとなった。 以上から,輸入齧歯類には,人に病原性のあるBartonella属菌やわが国の野生齧歯類には分布していない菌種が分布していることが明らかとなった。今後,分離されたBartonella属菌の病原性や伝播経路の解明,ならびに飼い主および関係者への啓発が必要と思われた。
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