研究課題
本研究の目的は、(1)カドミウム(Cd)の非汚染対照であるCd標準回帰直線(CSRL)について、その有効性を検証すること、(2)バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タリウム(Tl)でもCSRLと同様な汚染判定指標を作成すること、(3)動物実験によりTiが他の有害重金属元素の毒性を軽減するか否かを検討すること、および(4)細菌L.monocytogenes(L.m.)に対するCdとVの影響(増殖性と変異原性)を検討することである。(1)(2)の成績:22年度までにCSRLの検証および対照とした4元素を包含するPb指標(Mochizuki-Uedaline)の作成を終了した。23年度は、総計40匹のマウスに200ppm~40000ppmのPbを0.02mlずつ1~2回腹腔内投与して1週間~1ヶ月後に、肝臓と腎臓中のPb量を原子吸光法で測定し、現在、成績をまとめているところである。(3)の成績:22年~23度は、モルモット摘出臓器標本(血管、盲腸紐、肝臓)を用いて、各種濃度の硫酸TiとCdを投与した場合の影響を検討すると共に総計30匹のICR♂マウスにCdとTiを飲水で投与して肝臓と腎臓中のCd含量を検討した。この結果、摘出臓器では低濃度Ti(10^<-5>M以下)による細胞内cd含量の有意な変化は得られなかったが、高濃度Ti(10^<-4>M以上)では細胞内Cd含量の減少が認められた。また、血管と盲腸紐を用いて平滑筋の張力試験を行ったところ、盲腸紐ではcdによる高濃度カリウム収縮の抑制がTiにより抑制される成績が得られた(J.Toxicol.投稿準備中)。これに対して、マウスで行ったin vivoの実験では、Tiによる肝臓と腎臓組織中Cdの有意な変化は得られなかった。現在、得られた両臓器のCd含量をCSRLに当てはめて検討しているところである。(4)の成績:23年度はCdとVを含む培養液中で培養したL.mから抽出した染色体DNAを用いて、どのような変異が起こっているのかを電気泳動法を用いて解析した。現在、Cdによる染色体DNAへの影響とL.m.の血清型との関連を検討しているところである。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、本年度で終了となるが、既にカドミウム(Cd)の非汚染指標(CSRL)についての有効性の検討を終えて学術誌に公表している。さらに、鉛の非汚染指標(Mochizuki-Ueda line)が作製できたため、当初の計画では、タリウム、バナジウムなど4元素についても指標を作製するとしていたが、砒素などを含む8元素についての指標となる可能性が示唆されている。細菌L.monocytogenes(L.m)の染色体DNAに対するCdの影響でも、Cdが無作為に変異を起こさせるのではなく、血清型との関連がある結果を得ている。本年度、Mochizuki-Ueda lineの有効性の検討(実験は既に終了)、L.m血清型とCdの関連を検討し、これまでの成績を報告書としてまとめて提出する予定である。
上に記載したように、計画の遂行状況は順調であり特段の問題点はない。本年度、Mochizuki-Ueda lineの有効性の検討(実験は既に終了)、L.m血清型とCdの関連を検討し、これまでの成績を報告書としてまとめて提出する予定である。
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Bull Environ Contain Toxicol
巻: (In press)
Biol Trace Elem Res
J Comp Clin Med 19(1), 7-13
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巻: 143(2) ページ: 913-922
10.1007/s12011-010-8893-9
Biol Trace Elem Res 142(1):117-126
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DOI:10.1007/s12011-010-8741-y