日本養豚の生産性はまだ低く、低生産性が国産豚肉の高生産コストの大きな原因の一つである。国内養豚農家の低繁殖生産性の原因のひとつが、繁殖雌豚の若いうちでの淘汰と死亡である。新しい若雌豚の淘汰の増加は、新しい若雌豚の導入コストの上昇という経済面だけでなく、若雌豚が増えることによる群免疫の低下により感染症も引き起こす可能性がある。生産農場においては、国内では約10%の雌豚が四肢障害で淘汰されている。そのほとんどは0産から4産までの若い雌豚である。四肢障害は蹄外傷と密接な関係がある。また、蹄外傷や四肢障害は生きている間の苦痛を伴うため、動物福祉上も問題であると海外では指摘されている。その意味で繁殖雌豚の蹄問題は長期でみた動物福祉と生産性と群健康管理にかかる問題である。 生産農場を1チーム10人で訪問し、1頭の豚につき、4本の脚と2つの蹄の7か所の計56か所を仔細に観察した。3つの研究発表を行い主な結果は以下である。繁殖成績や淘汰記録を収集した。 1.約60%の雌豚の蹄のどこかに外傷があった。 2.蹄外傷のリスク因子は、産次が高い豚と妊娠期であった。初交配日齢は関連がなかった。 3.授乳豚の蹄外傷は繁殖成績や淘汰リスクと関連性がなかった。 4.妊娠期と授乳期の雌豚も、生存確率に差はなかった。 5.妊娠豚はスノコ床で飼育されていて、間隙方向が横スノコ床より縦スノコの床で飼育されている雌豚に蹄の外傷が少なかったことから、縦スノコ床が勧められる。
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