本研究は、高温性Campylobacter lariを対象として「推定される病原遺伝子」を比較分子生物学的に解析し、カンピロバクター感染症の発症に関わる病原因子とその発症の分子機構を科学的に解明することを目的としている。そこで、平成21年度においては、カンピロバクター属の中で特にCampylobacter jejuni、C.coli、C.lari、C.upsaliensis及びC.fetusの5種を対象として、オートインデューサー2産生に関与するluxS遺伝子に着目し解析を行った。具体的には、luxS遺伝子についてPCR及びSouthern blot hybridization法を用いて解析した。 まず、luxS遺伝子領域を増幅するためのPCR用プライマーをin silicoに構築しPCRを行ったところ、C.lariの全ての株とC.upsaliensis及びC.fetusの一部の株で増幅断片が確認されなかった。そこで、増幅された4種のPCR産物をプローブとしてサザンブロットハイブリダイゼーションを行った結果、ウレアーゼ陽性高温性カンピロバクター(UPTC)2株を含むC.lari4株は陰性で、それ以外の全ての株で陽性シグナルが検出された。 以上の結果より、C.lari種では他のCampylobacter種でよく保存されているluxS遺伝子が欠損しており、それ故にオートインデューサー2を産生していないことが示唆された。
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