本研究においては、cdt、ciaB、vacJ、cadF、flaC、p450、luxSなどのCampylobacter症の想定される病原遺伝子の全長とそれらに近接する遺伝子座位の分子比較解析をそれぞれ10株以上のCampylobacter lari株を用いて行った。これら解析した遺伝子に加えて、各々の構造遺伝子の5'-及び3'-非コード領域にプロモータ及びターミネーター構造の同定を行い、更にいくつかの遺伝子では転写レベルでの発現及び転写開始点が確認された。しかしながら、C.lari株ではC.jejuniと比べてこれら病原遺伝子の異なる分布プロファイルが明らかとなった。即ち、vacJやcadFの様に活性ドメインがC.jejuniと比べて不十分な例、あるいはluxSの様に遺伝子が存在しない事例が認められた。この様に本研究の結果から、我々が研究開始当初から仮設していた、C.lari生物はカンピロバクター症の病原遺伝子の自然突然変異体である可能性が強く示唆された。
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