研究概要 |
豚レンサ球菌(Streptococcus suis)はブタやヒトに重篤な疾病を引き起こす病原体で、近年は日本を含め世界中で人の死亡例が多数報告されているが、本菌による人獣共通感染症の予防に有効なワクチンはこれまで開発されていない。一方、近年のMultilocus Sequence Typing解析の結果からは、S.suis株集団は主に3つの遺伝的にクローナルな集団(ST1 complex,ST27 complex,ST87 complex)から構成され、このうちST1 complexとST27 complexがヒトやブタに髄膜炎や敗血症など重篤な疾病を引き起こした強毒株を多数含む集団と考えられる。そこで本課題では、これら2つの強毒株集団を対象に、それぞれの代表株から作製した調節系遺伝子欠損株における病原性の変化及び感染防御効果を解析する。更に、弱毒化した株で発現が変化した表層タンパク質を同定することで、弱毒ワクチン候補及び弱毒化に重要な因子に関する知見を得ることを目的とする。 本年度は弱毒化の標的遺伝子として、調節系遺伝子の中からhtrA,clpP,stkを選定し、遺伝子欠損株の作出を試みた。ST1 comlex代表株については3種類の欠損株を得ることができ、ST27 comlex代表株は1種類を作出し、現在も他の欠損株作製が進行中である。
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