栄養学的アプローチにより家畜の繁殖率を向上させる新たな飼養技術を確立することを目的に、以下の二つの実験を行った。 1、これまでの実験成績から短期間の高栄養処置による代謝系の刺激効果は一過性であり、継続して続かないことが示唆された。そこで本実験では短期間の高栄養給餌を継続的ではなく間欠的に行い、より効果的な代謝系促進作用を期待し、発情周期における卵巣活動や性ホルモン分泌に促進的効果が得られるか検討した。発情周期を回帰する雌シバヤギを2群に分け、処置群には排卵後の黄体期開花期および黄体退行期の2回に分けて間欠的に高栄養給餌を行った。その結果、栄養処置によって血中のグルコースおよびインスリン濃度が波状に上昇し、処置後の卵胞期において発育卵胞数および排卵数が増加することが明らかとなった。よって、栄養と繁殖を結びつける役割を担っているグルコース利用性を制御することで、様々な繁殖ステージにおいても家畜の繁殖機能を活性化させ得ることが強く示唆された。 2、本実験では持続的な血中グルコース濃度の上昇が黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌を亢進させるという仮説をたて、実験を行った。卵巣摘出したシバヤギを2群に分け、処置群にはグルコース溶液を頸静脈より投与し、対照群にはグルコース溶液の代わりに生理食塩液を投与した。グルコース溶液の投与は、投与量を徐々に増加させ、血中グルコースレベルが高い濃度で継続的に維持できるように設定した。その結果、投与前、投与後3日および7日における10分毎6時間の頻回採血において、LHのパルス状分泌パターンに変化は見られなかった。グルコース利用性がLH分泌に及ぼす影響に関して、グルコースの継続的投与に加え間欠的投与についても検討する必要があると思われる。
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