研究概要 |
1)ルペオールの細胞周期およびアポトーシス関連遺伝子に及ぼす影響 マウス由来黒色腫細胞B16を用いて、細胞周期関連遺伝子PcNA, Ki-67およびアポトーシス関連遺伝子Rab27a, Bcl-2の発現に及ぼす影響をリアルタイムPCRで調べた結果、PCNA、Ki-67の遺伝子発現は約40%まで減少した。Rab27a, Bcl-2については、変化はみられなかった。このことより、ルペオールは細胞周期に影響を及ぼすことが判明した。 2)自然発症悪性黒色腫に対するルペオールの抗腫瘍効果 自然発症例の悪性黒色腫13例にルペオールを適用した。腫瘍発生部位は下顎7例、口腔内3例、鼻梁1例、腹側皮下1例、後肢端1例であった。投与方法は初期治療として原則皮下に1~3ml/kg(5mg/ml)のルペオールを週2回で計4回投与した。その後、2-3週間に1回定期的に投与した。これまで報告されている悪性黒色腫の中央生存期間の168日を基準とし、168日以上再発転移のないものを有効とした。その倍の336日以上再発のない症例およびルペオール単独投与により腫瘍消失が認められた症例を著効とした。13例中6例で著効、5例で有効、2例で無効だった。今回の中央生存値は233日であった。下顎吻側の1例では、3回のルペオール投与により腫瘍が消失した。しかし、ルペオールを3週間投与しないと再発が見られた。再度1週間間隔で2回投与し、腫瘍は消失した。全症例においてルペオール投与による有害事象は認められなかった。このことより、ルペオールは悪性黒色腫に対する治療効果が期待でき、早期治療や手術を希望されない場合の治療の選択肢の1つになりえることが示唆された。
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