研究概要 |
昨年度に引き続いて乳牛の分娩後繁殖機能回復モニタリングを実施し、分娩後初回の繁殖を人工授精(AI)で行った場合と、胚移植(ET)で行った場合の繁殖成績の比較を行うとともに、繁殖成績に影響する要因ついて解析を行った。 (1) 山口県内の2牧場(A,B牛群)における分娩後初回ETとAIによる繁殖成績の比較 A牛群では、分娩牛71頭中36頭が初回繁殖にETを、残りの35頭はAIを実施された。B牛群では60頭中36頭が初回にETを、24頭がAIを実施された。A群の、分娩後80日内におけるETの受胎率は55.0%と、AIの受胎率(46.2%)よりも高い傾向があった。また、初回ET実施例35頭における分娩後210日以内妊娠率は90%、平均空胎日数は105±53日であり、初回AI実施例の144±74日に比べ、著しく少なかった(P<0.05)。B牛群でも、初回ET群の方が、AI群に比べ、分娩後210日以内妊娠率が局い傾向があった(86.1% vs 66.7%)。このように、飼い主の判断に基づいて、分娩後初回にETまたはAIを実施した場合、初回ET群の方がAI群よりも繁殖成績が優れていることが分かった。 (2) 分娩後初回ETの受胎率に影響を及ぼす要因の解析 初回ET受胎率に影響を及ぼす可能性のある要因として、産次数、分娩季節、ET実施時の季節、分娩後卵巣機能回復異常、黄体形成からの日数、子宮内膜炎、尿膣を取り上げ、解析を行ったところ、A, B両牛群とも、卵巣機能回復異常が影響していることが明らかになった。 (3) 大学付属農場の牛群の分娩後卵巣機能正常回復例における比較試験 広島大学および新潟大学の牛群において分娩後生殖機能回復モニタリングを実施し、正常回復例をET群とAI群に区分し、受胎率およびその後の繁殖成績の比較を行う試験を開始した。ET, AIとも実施例数がまだ不十分であり、22年度においても、さらに試験を継続し、例数の集積を行っている。 以上のとおり、分娩後繁殖機能モニタリングにより、卵巣機能回復正常例を早期に判定し、ETを応用することは乳牛の繁殖成績向上に有益な方法であることが示唆された。
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