異種移植における最も大きなBarrierは超急性拒絶反応であり、ブタ・ヒト間における主たる要因はブタ細胞に発現するαGal抗原である。しかし、異種移植ではGal以外の抗原も存在し、ブタのラ島ではGal抗原の発現は乏しい一方で、NonGal抗原は発現している。レシピエントにおける抗NonGal抗体の存在については、霊長類のみならずイヌにおいてもGalKO細胞が必要であり、その検討はほとんど行われていない。本研究ではブタ細胞(Gal+)と共同研究者山田より提供を受けたブタGalKO細胞を用い、イヌ血清中の抗Galおよび抗NonGal抗体についてCytotoxic AssayならびにELISAを用いて前臨床異種移植モデルで用いられているヒヒと比較検討した。 Cytotoxic AssayではGalKOブタ腎移植後Day16で拒絶したヒヒと移植腎が50日後も正常であったヒヒの術前検体を用いて検討を行った。両者はGa1+細胞に対して同等の傷害性を示したが、NonGal抗体は前者が優位に高かった。イヌ血清のGal+ブタ細胞に対する傷害性は、ヒヒのそれより若干低く、反面GalKO細胞に対する傷害性は早期拒絶したヒヒとほぼ同程度であった。この結果は、イヌ血清中の異種抗体はGal抗体が霊長類のそれに比べ傷害性が弱く、Non-Gal抗体による傷害性が優位であることを示唆している。ELISAではイヌの抗Gal抗体についてヒヒと比較検討した。イヌの抗Gal IgM抗体はヒヒの検体と比較して同等または低値を示したが、抗Gal IgG抗体はヒヒに比べ検討を行った4例全てで低値を示した。本結果から、イヌではNonGal抗原に対する傷害性がその生着の重要な因子であると考えられ、次年度のIn Vivoモデルでは、早期拒絶を呈した場合その抗体の除去に対し血漿交換などの前処置を検討している。
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