研究課題/領域番号 |
20580359
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
齋藤 弥代子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (80367242)
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研究分担者 |
落合 秀治 麻布大学, 付置研究所, 講師 (20247307)
水谷 哲也 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 主任研究員 (70281681)
前田 健 山口大学, 農学部, 教授 (90284273)
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キーワード | 診断 / 未知のウイルス / 犬ジステンパーウイルス |
研究概要 |
二年目である本年は、検体の採取と臨床データ収集、そして培養細胞を用いたウイルス分離とPCR法を用いたウイルス核酸の検出を試みた。さらに、イヌにおける中枢神経病原性ウイルスの分離感度を向上させるため、イヌの脳神経細胞由来の株化細胞樹立を試みた。 脳炎を呈したイヌの脳脊髄液から、これまで日本の野外に存在していないと思われていたイヌジステンパーウイルス(CDV)の遺伝子型が検出された。詳細な解析により特定のワクチンと同一の配列であることが確認され、ワクチンによる脳炎の発症の可能性が強く示唆された。今回の結果は複数の機関が関与しているので慎重な解釈を必要とするが、今後ワクチン株の病原性を再検討する必要性が示唆された。 ハクビシンから飼育犬へのCDV感染が強く疑われた地域で2009年12月に捕獲された二匹のタヌキよりCDVウイルスの捕獲に成功した。変異が激しいといわれているF遺伝子の3'末端の配列を決定した結果、典型的なアジアで流行しているウイルスであったが、ワクチン株との相同性は86%まで低下していた。今後野生動物からイヌへの感染を注視する必要ある。 神経細胞株の樹立を目的として、ビーグル犬成犬の大脳を用いて、neurosphere法による神経幹細胞の培養を試みたところ、N2サプリメント、EGF, FGF2を含んだ無血清培地で培養したところ、ラットで報告されているようにneurosphereの形成が確認されたが、細胞増殖能が低い傾向にあり、発育はげっし類で報告されているほど良好ではなかった。次に活発な細胞分裂能を有すると期待できる1日齢のビーグル仔犬を用いて細胞培養を試みたところ、多数のneurosphereの形成が確認された。これにSV40 T抗原をコードするプラスミドを遺伝子導入し、テロメラーゼ活性の誘導による細胞の不死化を試みたが、遺伝子陽性細胞株(G418耐性株)の細胞は得られなかった。また、イヌのneurosphereは報告されているラットのneurosphereより寿命が短く培養条件の検討も必要と考えられた。
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