研究概要 |
農水産直機廃棄物とには生理活性物質などの有用物質が高濃度で存在するものの, 同時に多種多量の有害重金属が重金属結合タンパク質と強固に結合して存在し, さらに一部の重金属結合タンパク質は多糖類等で被覆されている. そのため高タンパク質分解微生物や高糖化活性を有する微生物のみの処理では重金属結合タンパク質とそれを被覆する多糖類の低分子化と脱重金属が不十分であり, 従って資源としての有効利用が困難な状況にある. 以上から, 創出が比較的容易な亜臨界水を用いて重金属結合タンパク質及びそれを被覆する多糖類の低分子化と脱重金属を試みた. 具体的には, フェリチンをモデル重金属結合タンパク質とし, またセルロース粉末あるいは可溶性澱粉をモデルタンパク質被覆多糖類として亜臨界水による最適低分子化処理条件を抽出した. 電気炉並びに密閉反応管から成る回分的亜臨界水創出装置による処理の結果, 230℃(約3MPaの圧力に相当)で20分間処理するなら, モデル重金属結合タンパク質が低分子化されで重金属イオンが定量的に遊離し, またモデル多糖類は定量的に単糖類. 二糖類及び三糖類に低分子化された。以上の成果から重金属結合タンパク質及び多糖類モデル化合物の亜臨界水処理による低分子化は, 処理圧力と処理時間に依存する機構によると考察した. 次いで同条件下において実際の農水産有機廃棄物(馬鈴薯澱搾滓 : セルロース, ペクチン, 及び澱粉質を主成分とする, ホタテガイ中腸腺 ; 高濃度のタンパク質結合性カドミウムを含む)を処理したところ, 多糖類とタンパク質が低分子化され脱重金属反応が進行するが, 同時に過分解などの副次反応も進行した. 以上から実際の農水産有機廃棄物の亜臨界水処理には副次反応を抑制する条件の抽出が必要と考察された.
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