(1)平成21年度科学研究補助金による馬鈴薯澱粉製造残渣をモデル廃棄物とする研究成果に基づき、モミ殻、雑草(芝)、隈笹(Sasa reitchil)葉部をモデル農産廃棄物とする試験、あるいはホタテガイ中腸腺をモデル水産廃棄物とする試験を行い、亜臨界処理温度や処理時間が不十分な場合にはセルラーゼ活性を有する微生物処理あるいはプロテアーゼ活性を有する微生物処理を行っても低分子化は進行しないため脱重金属や資源化が困難であり、また過剰の亜臨界処理によっては脱重金属反応は進行するものの過分解反応による微生物活性阻害分子種が形成されることを明らかにした。(2)以上からモデル農産廃棄物中の多糖類濃度に基づく処理温度と処理時間に関する要素(ファクター)を明らかにして処理条件を決定する関係式を導き、これに基づいて馬鈴薯澱粉製造残渣(固形分)、モミ殻、雑草、あるいは隈笹葉部を亜臨界処理した後、段階的にセルラーゼ活性を有する微生物で処理したところ、亜臨界処理あるいは微生物処理のみの単独処理に比較して低分子化と脱重金属は大幅に向上し、また酵母(Saccharomeces serevisiae)を発酵菌とする発酵試験においても対糖モル収率に合致するエタノールが生産された。(3)他方、ホタテガイ中腸腺をモデル廃棄物とする試験においては、上記(2)に示した要素と関係式に基づく亜臨界処理によって脱重金属反応は進行するものの、同時に未同定の含窒化合物が形成されてプロテアーゼ活性が阻害され、資源化が困難であることが明らかとなった。(4)他方、北海道沿岸で自生量の多いエゾノネジモク(Sargassum yezoense)をモデル未利用水産物として上記(2)に記載の要素と関係式に基づく亜臨界処理を行った後、段階的にセルラーゼ活性やカラギーナーゼ活性を有する微生物で処理したが、多種類の未同定分子種が形成され、またエタノール生産も対糖モル収率より大幅に低値であった。(5)この結果は、亜臨界処理における水産廃棄物と農産廃棄物の挙動が異なり、従って形成分子種も異なることを示唆するもものである。
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