ホンモンジゴケの無菌胞子から発芽した原糸体を1/10濃度のムラシゲースクーグ無機塩混合培地で、また、アオネカズラの無菌胞子から発芽した前葉体を3%(w/v)ショ糖を含むMSK-3培地で、光量子密度98μmol/sec/m^2、22℃の環境制御下で、2ヵ月間、継代培養した。同培地(正常培地)と正常培地に0.2mMまたは0.4mM硫酸銅を加えた銅培地で、各々の細胞を3ヵ月間培養した。経時的に得られた植物体の乾燥重量と細胞内に吸収された銅含量を定量した。その結果、ホンモンジゴケの生育は、正常培地と銅培地において、全く影響されなかったが、アオネカズラは、銅培地において、正常培地と比較して、生育の減少が見られた。また、ホンモンジゴケとアオネカズラは、3ヵ月間の培養において、生育とともに経時的に銅を生体内に集積した。次に、2ヵ月間培養したホンモンジゴケ原糸体とアオネカズラ前葉体をミキサーで破砕し、遠心分離によって得られた細胞残渣にα-アミラーゼとプロテアーゼを作用させ、混在している澱粉と細胞壁結合蛋白質を除去し、細胞壁標品を調製した。細胞壁は、2Mトリフルオロ酢酸で熱分解し、中性糖はガスクロマトグラフで分別定量し、ウロン酸はヒドロキシジフェニル法で測定し、細胞壁の構成糖組成を検討した。ホンモンジゴケの正常細胞と銅処理細胞の細胞壁に含まれるウロン酸含量はほとんど変化がなかったが、アラビノースとガラクトース含量は、銅処理によって明らかに減少した。一方、アオネカズラにおいては、銅処理によって、ラムノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、ウロン酸含量などの顕著な減少が認められた。
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