研究概要 |
ホンモンジゴケの原糸は、1/10のムラシゲースクーグ基本塩混合培地に寒天を加えた正常地と同培地に0.2mM硫酸銅を加えた銅培地で、アオネカズラの前葉体は、ムラシゲ-スクーグ改変培地にショ糖と寒天を加えた正常培地と同培地に0.4mM硫酸銅を加えた銅培地で、98μmol/sec/m^2、22℃の環境制御下で2ヵ月間、大量に培養する。正常培地と銅培地で生育した両細胞を破砕し沈澱画分を集め、塩化リチーム、α-アミラーゼ、プロテアーゼ、エタノールなどの処理をした後、細胞壁標品を得る。両者の正常細胞壁と銅処理細胞壁に含まれる非セルロース性全糖を測定した結果、両細胞ともほとんど同量であった。次に、シクロヘキサン-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)と炭酸ナトリウムでペクチンを抽出し、引き続き1Mと4Mの水酸化カリウムでヘミセルロースを抽出した。ホンモンジゴケの銅処理細胞壁においては、CDTA可溶画分が正常細胞の42%に減少していたが、他の画分はほとんど差がなかった。一方、アオネカズラの銅処理細胞壁においては、4M水酸化カリウム可溶画分が、正常細胞壁の59%に減少した。抽出されたペクチンとヘミセルロース画分の構成糖組成を検討した結果、銅処理によって、ホンモンジゴケからの1M水酸化カリウム可溶画分のキシロースが減少しウロン酸が増加し、また、アオネカズラからのペクチン画分のグルコースが約2倍に増加した。以上のことから、ホンモンジゴケとアオネカズラの細胞壁から可溶化されたマトリックス多糖画分は、銅処理によって大きく変化していることが明らかになった。
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