ホンモンジゴケ原糸体は、1/10濃度のムラシゲ-スクーグ基本塩混合培地に寒天を加えた正常培地と同培地に0.2mM硫酸銅を加えた銅培地で、アオネカズラ前葉体はムラシゲ-スクーグ改変培地にショ糖と寒天を加えた正常培地と同培地に0.4mM硫酸銅を加えた銅培地で、98μmol/sec/m^2、22℃の環境制御下で2ヵ月間培養した。正常培地と銅培地で生育した両細胞を破砕し、可溶性画分と沈澱画分に分画した。可溶性画分に含まれる蛋白質は硫安沈澱として集め酵素液とし、沈澱画分は塩化リチウム、α-アミラーゼ、プロテアーゼ、エタノール処理後に風乾し、細胞壁標品とした。ホンモンジゴケとアオネカズラの酵素液には多数の細胞壁糖質加水分解酵素が検出され、ホンモンジゴケにおいてはβ-グルコシダーゼ、α-とβ-ガラクトシダーゼ、アオネカズラにおいてはα-ガラクトシダーゼとポリガラクツロナーゼの活性が高かった。ホンモンジゴケとアオネカズラの細胞壁から抽出されたペクチンとヘミセルロースをDEAE-セファロースカラムクロマトグラフィーにて分画すると、主要画分はカラム未吸着画分(P-1)と0.125M塩化ナトリウム溶出画分(P-2)であったので、両画分の構成糖組成を解析した。銅処理によって、ホンモンジゴケにおいてはCDTAと1M KOH抽出多糖のP-1画分とP-2画分のラムノース含量が2~3倍に増加し、4M KOH抽出多糖のP-1画分のキシロース含量が1/2に減少しウロン酸含量が2倍に増加した。アオネカズラにおいては1M KOH抽出多糖のP-1画分のアラビノース含量とマンノース含量が約2倍に増加した。ホンモンジゴケ細胞壁中の銅は、全量の2/5がホモガラクツロナンに結合していた。ホンモンジゴケ原糸体とアオネカズラ前葉体を0.2mM亜鉛含有培地で生育させた場合に、ホンモンジゴケはコントロールとほぼ同じであったが、アオネカズラにおいては約25%の減少を示した。
|