研究概要 |
本研究は当初の目的に従って樹木スピリッツの有効利用を目指した。本研究は3年計画であ初年度にあたる今年は主に、樹木スピリッツ(精油)の機能を明らかにするために幾つかの実験を行なった。まず、タイ国産ユーカリ葉精油の機能に関して抗酸化性、ラジカル捕捉能を調べるとともに、抗菌活性、抗シロアリ活性を調べ、いずれの機能においてもかなりの能力を示すことを明らかにした。それらの結果は中国で開催された国際学会(Harbin,2008)において発表するとともに、学会誌(J.wood sci.,2009)への投稿・掲載を行なった。国内産ヒノキの樹木スピリッツについては人体の自律神経系に及ぼす効果を調べるために、葉精油あるいは材精油を嗅いだ後の血圧、心拍数、ストレス度、脳波(低周波域)の変化を測定した。ヒノキ精油を嗅ぐことにより統計的に有意に血圧の低下、ストレス度の低下、α波の増加などが得られ、ヒノキ精油の香りは人体の副交感神経系を活性化、すなわち緊張状態を緩和する能力があることが明らかとなった。更に、ヒノキ精油は抗菌活性、抗シロアリ活性を有することを示し、これらの結果はIUMRS国際シンポジウム(Nagoya,2008)で発表した。後者の研究は公設試験機関との共同で野外確認実験を継続的に行なっている。今回明らかにされた樹木スピリッツの機能は今後の主要な植林木であるヒノキ材、ユーカリ材の高付加価値化において重要な意味を持ち、近い将来、地域活性化のための共同研究につなげていく予定である。
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